真実を聞き分ける判断力と知恵を
松本素代美 
日本バプテスト連盟理事長 
 私たちの傍らには常にスマホがあり、SNSをはじめとする新たなメディアには、人々の感情を共有、共振させる影響力が大きく、AIは一瞬にして私たちの疑問に「答えのようなもの」を出してきます。私たちの想像力や関心や言葉は、インターネット上の情報や視覚的イメージにいつの間にかコントロールされてはいないでしょうか。
 世界中で不寛容の兆しが強まり、社会の分断が深まり他者を理解しようとする理性と、他者との間に差別と権力による壁を造ろうとする狭間で世界は揺れ動いています。我が国でも昨年「異質」への拒否感が広がり、公然と「日本人ファースト」を掲げた政党が躍進し、国家主義・排外主義運動が台頭しました。
 私たちは「多様性を認め合おう」と唱えながら、他方でその多様性を無視し短期間に成果を上げる道を選択してはいないでしょうか。情報が操作され流言飛語や恐怖心で思考力が麻痺し、おかしいと皆が感じなくなれば自由と民主主義は機能不全に陥ります。それは我が国が戦争に突入した歴史でも証明されています。第二次世界大戦中、私が所属した教会の礼拝では公然と「宮城遥拝」が実行されていました。     
1988年日本バプテスト連盟は「第42回連盟年次総会」に於いて、「戦争責任に関する信仰宣言」を採択し、自らの戦争責任を告白・悔い改めを表明し、続く2002年には「平和に関する信仰的宣言」を採択し、毎年8月を「平和宣言月間」として悔い改めと平和への祈りを重ねています。憲法で保障されている筈の「信教の自由」は、為政者により一瞬にしてはぎ取られてしまう経験を、私たちは忘れないように心に刻みたいと思います。
 私の住む長崎市は毎月9日の11時02分に同じ曲が市内に流れます。被爆50周年を記念して歌詞を全国公募して生まれた「千羽鶴」のメロディが流れると、爆心地近くの小学校では黙祷の時を持ちます。2024年広島・長崎の原爆被爆者による草の根運動を68年に渡りリードしてきた日本原水爆被害者団体(被団協)に、ノーベル平和賞が授与されました。しかし唯一の被爆国である我が国は、公立小学校に配布した「最新子ども防衛白書」では非核三原則に触れず、現政権はこの非核三原則の見直しを検討している事が判明しています。敗戦後80年が過ぎ、直接戦争体験を語る方々の期限がカウントダウンされています。私たちが同じ過ちを繰り返さないため、真実の言葉を聞き分ける判断力と知恵をみ言葉から受け、心に刻んでいきたいと切に祈ります。
                    (まつもと そよみ)